京都国際漫画賞2017・台湾部門

台湾部門・大賞

隠しステージTHL

常勝 

【審査員コメント】

いかにもありそうなゲーム世界を構成巧みに描いている。画力高い。(武者)

最初に「キーワード」を入れてのストーリー構成、緻密な画力、完成度がとても高い。
これでも読者人気は得られるかもですが、日本の読者むけに考えると、この主人公のヒロインとしてのアイドル的魅力を高めたほうが読者ウケはいいと思ういます。
主人公の華にやや欠ける感じがしたので、そこをクリアしたら大きな成功の可能性があると思います。(鈴木)

スケールが大きく、画力の高さも圧巻。が、しかし、いまいち世界観に入り込めませんでした。
謎の死を受けて開発者の家に行ったところまではワクワクしましたが、その先、仮面のキャラクターが出てきたところあたりから若干話についていけなくなってしまい…。
なぜ仮面のキャラクターを倒すと隠しステージに行けるのか、それは昼間に開発者の家に行ったことと関係あるのか、なぜ羊の姿になった警部は彼女を止めようとするのかなど、
いろいろな疑問の答えが何一つ明らかにならないまま話が進んでしまうので、読者が置いてけぼりになってしまう気がします。(平野)

好きな作品の影響や既視感のある描写は見受けられましたが、デスゲームものというジジャンルで、とても体温を感じられるヒロインを描いていることに魅せられました。
ヒロイン含めた学生のキャラクターが大人に見えるので、より少女らしさを出すための等身や顔立ちの調整が出来れば、見え方の幅がもっと広がると思います。(中野)

入選

NOBI璋《時渦》

アイデア、表現ともに素晴らしい。主人公の強さと弱さ、葛藤が良く描けている。主人公はニヒルな渡世人・木枯らし紋次郎のようだ。(武者)

面白い!不老不死にまつわる人間ドラマ。愛する人を人質に取られ、始皇帝を憎みながらも彼のために不老不死の秘術を探す凄腕のダークヒーローという主人公の設定が秀逸。
その他、始皇帝、大工の易、易に憧れる弟子、始皇帝暗殺を目論む刺客・燭など、出てくるキャラクターがみんな魅力的。欲望、野心、愛情、弱さなど、人間に対する深い洞察を感じます。
蝉や短剣などの小物遣いも上手。続きも読みたいと思わされました。気になったのは、絵柄。かなり癖が強いので、読者を選びそうです…。(平野)

内容がとても素晴らしく、大人のためのマンガです。キャラクターの造形もそれと非常にマッチしています。
しかし背景や小道具を簡略化してしまったことで、作品の説得力が損なわれていると感じます。この絵柄だからこそ、小道具のディティールをリアルに描けば、本筋の説得力がさらに堅牢なものになります。
あと細かいところですが、顔がそっくりという設定の二人を、本当にそっくりに描いたほうが良かったかもしれません。(呉)

凱子包《魔女》

画力有り。滔々とと流れるストーリー。雨降って地固まる。読後感は良い。(武者)

しっかり自分の世界を持っている作家の力作。絵が非常に上手い。森薫さんや、五十嵐大介さんのような、絵の細部へのこだわりが、素敵。
物語の軸は少し、分かりにくい点が惜しい。主人公が何をしたいのか、するのか。読者にどこを楽しんでもらいたいのか、しっかり整理して、ネームを練り込んで欲しい。
少女同士の友情から、愛に移り変わっていく様は、非常に綺麗だった。(林)

西洋絵画のような描画がとても美しい。全入選作の中でもっとも作者の主張が強く、作品に人の心を動かす可能性を秘めていると感じます。
しかし物語の整理や状況説明がやあやあ不得意で、読み込まないと状況把握できない部分もあります。またページ数も必要以上に長く感じます。
整理すれば主人公たちの思いをより効率良くかつ効果的に読者に伝えることができたはずです。作品そのものの完成度ではなく、成長の余地があるところに可能性の高さを感じて、高く評価しました。(呉)

Gene《ランプの中の悪魔》

華がある。絵の魅力がある。キャラの肌触りがよく、魅力を感じる。一方でストーリーは小難しく飲み込みにくかった。
作品の売りを何にするかでストーリー作りは変わるので、この主人公がもっと活躍するストーリーを見たい。
次回作は、恋愛要素というか、カップリングの楽しさを描いたものも見てみたい。日本で売れる可能性のある作家だと思う。(鈴木)

綺麗で読みやすい絵が好印象。美男美女を描けるのも武器だと思います。ただ、話の内容が全体的に主人公にとって都合が良すぎる気がしました。
なぜか鑑識にランプがある、悪魔が主人公にとって敵でも中立でもなく完全に味方、弟が死の直前に悪魔と約束を交わしていた、など。
特に悪魔のキャラクターに関しては、彼のモチベーション・行動目的が何かがわからないのも気になりました。
そこを詰めていって、優しいだけでなく冷酷さ、厳しさを持った深みのあるキャラクターにできれば、この悪魔は人気出そうだと思います。(平野)

ランプの精という既存のモチーフを自分の作品に取り込むのが上手く、画面からもセンスの良さを感じます。
強いて言えば、キャラクターデザイン含めコンセプトアートに、もっとオリジナリティーがあると良かったです。(中野)

無限零《七月半》

とても、読みやすいネームを切れる作家。コメディのテンポが良い。最低限の舞台設定とキャラで、笑いを作れている。
ただ、物語が始まっただけなので、「生前の記憶をどう取り戻すか」若しくは、「記憶が無いなりにどう生きるか」まで描かないと、物語の良い、悪いは分からない。
登場から少ない台詞でキャラを立てられる作家なので、しっかり物語のドラマを練り込んだ作品を読んでみたい。(林)

短編として秀逸な作品でした。死というテーマをコメディー中心で描いたこと、そして主人公が記憶喪失でありながら非凡な訳ありキャラを予感させる描写により、ラスト3ページの感動と余韻が見事に演出されていました。
建物等の背景がもっとしっかり描ければ、世界観に深みが出て、作品力が上がると思います。(中野)

内容は非常にシンプルですが、独特な「間」の持ち方で読ませる秀作です。画力の高さも特筆すべきです。
ただこの回の中で物語の目的(主人公の欲望)が見えて来ないので、長い物語を描く時に非常に苦しくなるのではないでしょうか。
作品を「ネタ」の段階で終わらせないためにも、表面的なものではなく、主人公が心より欲するものを考えて、作品の主軸として導入したほうが良いと感じました。(呉)

夕燒《Herb甜點屋》

可愛い絵柄、可愛いキャラクター、年齢の下の女子向けとしては良いと思う。既存の作家の影響を感じるので、オリジナリティのある可愛さを追求してください。(鈴木)

丁寧に描かれており物語含め好感が持てる作品でした。ただ、キャラクターの個性や魅力を引き出すための描写が薄かったのが残念です。
ページが増えてもいいので、主人公・セナの性格と関連したパティシェとしての腕前やこだわり等をスイーツ作りの工程を交え見せてほしかったです。(中野)

絵の力は大変なもので、ビジュアルだけで読者を惹きつける力があります。しかしながら、物語は絵の如くとてもキレイな話で終わってしまったのは惜しい。
マンガの魅力はやはりキャラクターの強烈な人間らしさにあるので、登場人物たちは愛しい人々ではあるものの、読んでいてその「愛しさ」に、何らかの形の「激しさ」がほしくなってしまいます。
つまり主人公二人の友情以上の関係、そして出会いそのものが「運命」と言える描写がほしいです。と言いながら今作はすでに読みやすい良い作品でした。
強いて言えば、キーアイテムのスイーツをもっと大きく描いたほうが良いのではないかと感じました。(呉)

何振奇《LOOP 支配者》

読みやすい好感持たれそうな絵柄。絵力があって可能性豊かな人。この作品では要素を詰め込み過ぎたかも。
飛行機はNGで拳銃はOKのようだが、何が文明で文明でないのか、血魔とは何なのか、友だちの問題、色々消化不良に終わった。
短いページで描けることには限りがあるので、整理して見せたいことをぐっと絞ると、より良い感じがしました。(鈴木)

全体に、アクションのコマ運びがテンポよく、読みやすかった。丁寧なキャラ描写。友人との約束→裏切り→死→絶望は、分かりやすかったが「絶望した彼が何をするのか」一番大事なところが描かれていなかった。
連載の1話目の作りで、物語の盛り上がりを作らずに終わっているのが残念だった。特に、血魔がなんなのか、最後まで分からなかったので、判断が難しい。クリーチャーデザインや、恐怖を煽る描写が非常に良いと思います。
結末まで描ききった読切を読んでみたかった。(林)

作者の思いや熱量が伝わってくる作品でした。しかし、せっかく伝えたいことや描きたいことがあるのに、コマ割りや画面の構図で分かりにくいところが多々有り作品に没入できませんでした。
状況や流れを明確に伝えるために、より客観的な視野を意識してほしいです。構成や演出で凝ろうとしている部分も意欲は買いますが、読み手に伝える術を熟考してください。(中野)